フリマアプリ大手のメルカリが、サッカーのJ1、鹿島アントラーズの筆頭株主としてチームの経営に参入することになりました。
これは30日、メルカリとアントラーズが明らかにしました。
それによりますとチームを支えてきた日本製鉄とその子会社が保有する運営会社の株式、72.5%のうち、61.6%を15億8800万円でメルカリが取得し、筆頭株主になることで合意したということで、30日開かれたJリーグの理事会でメルカリへの株式の譲渡が承認されました。
Jリーグではヴィッセル神戸の楽天、町田ゼルビアのサイバーエージェントなど、IT企業がチームの経営に乗り出す例が相次いでいます。
30日夜の記者会見でメルカリの小泉文明社長兼COOは、「チーム運営や伝統を変えるつもりはないが、まだまだビジネスとして、できる部分が多い。テクノロジーを使ってファンや広告を獲得したり、地域の観光につなげたりしたい。チームと一緒にビジネスを作り、愛されるチームを作りたい」と意気込みを話しました。
また、メルカリによりますと今回の経営参入に伴ってチームの本拠地や、チーム名を変更することはないということです。
メルカリ社長兼COO「チームの伝統変える必要なし」
フリマアプリ大手、メルカリの小泉文明社長兼COOは記者会見で、「鹿島アントラーズという日本を代表するチームの経営をサポートできるということで、非常にワクワクしている」と話し、経営参入によって実現したいことには、「顧客層の拡大」と「ブランドの向上」それに「ビジネス機会の創出」の3つをあげました。
そのうえで、「チームの運営については、多くの人たちが長い間培ってきた伝統を変える必要はないと思っている。今後、アントラーズが世界に打って出るために私たちはビジネスで大きなチャレンジをして成長しそのお金でチームを補強して、常勝集団としての地位を獲得できるようにしたい」と話していました。
アントラーズ社長「持続的な成長にプラス」
会見したアントラーズの庄野洋社長は、「サッカーやJリーグ、それにアントラーズを取り巻く環境が激変している。ビッグマネーが動いて選手の移籍もとても多い中で、クラブが発展し、成長するためには、伝統はしっかりと継承し、変わるべきところはしっかりと変えていく必要があると思う。新しくメルカリの血が入ることが、クラブの持続的な成長にプラスに働くと確信している。メルカリが持つノウハウや知識、テクノロジーを活用し、クラブの永遠のテーマであるフットボールドリームと勝利を追い求めていきたい」と話していました。
日本製鉄「今後もサポート」
日本製鉄の津加宏執行役員は、「アントラーズを将来にわたって世界で戦うチームにするためには、企業価値を高め、経営基盤を強化することが最大の課題だった。新たなビジネス展開をし、ファン層の拡大や売り上げをさらに伸ばしていくためにはそういったことに精通している新しいパートナーを迎え入れて事業展開を図ることが得策だと判断した。経営の主体はメルカリに委ねるが、今後も引き続き主要株主として経営に関与するとともに、オフィシャルスポンサーとしてのサポートに務めていきたい」と話していました。
鹿嶋市民は
サッカーJ1鹿島アントラーズの経営権をフリマアプリ大手のメルカリが取得することを受けて、ファンが集まる居酒屋を経営する茨城県鹿嶋市の男性は、「母体が変わるというのは非常に大きな話だ。今後、本拠地を鹿嶋市から移動することだけはしてほしくないです」と話していました。
また、長年アントラーズを応援してきたという男性は、「ショックで動揺しています。この先どうなるのか不安です。鹿島アントラーズに勇気をもらい、誇りに思ってきました。アントラーズはホームタウンや伝統、サポーターを大事にしたりしてきたので、メルカリさんにはいい伝統は残しながらサポートしていただけたらと思います」と話していました。
鹿島と日本製鉄の歴史
鹿島アントラーズは住友金属工業、現在の「日本製鉄」のサッカーチームが前身で、アマチュアの企業チームとして1947年に大阪市で創設されました。
1974年に日本リーグ2部に昇格し、その1年後に製鉄所がある地域を盛り上げようと、茨城県鹿嶋市に本拠地を移転しました。
日本リーグ時代には「ドーハの悲劇」のメンバーだった元日本代表の大野俊三さんや、リオデジャネイロオリンピックで男子サッカーの監督を務め、現在はV・ファーレン長崎を率いる手倉森誠監督らの活躍で1985年に初めての1部昇格を果たしました。
そして、Jリーグ開幕前の1991年には元ブラジル代表のキャプテンで「サッカーの神様」と呼ばれるジーコ氏がチームに加入して大きな話題を呼び、Jリーグ開幕に合わせて当時国内では珍しかったサッカー専用スタジアムを建設するなど、「地域密着」を理念にJリーグを盛り上げてきました。
2012年には住友金属工業と新日鉄が経営統合して「新日鉄住金」が発足し、去年には名称が「日本製鉄」に変わりましたが、引き続き、アントラーズの運営会社の筆頭株主として経営を支えてきました。
今後は筆頭株主ではなくなるものの、運営会社の株の11%を引き続き保有し、主要株主として経営には関与していくということです。
Jリーグで優勝最多チーム
鹿島アントラーズは、茨城県鹿嶋市などをホームタウンにするJ1の強豪で、Jリーグ発足当初から加盟する10チーム、「オリジナル10」の一つです。
1947年に創設された当時の住友金属工業のサッカーチームが前身で、Jリーグに加盟した1991年、鹿島アントラーズに名称を変更しました。
そして、Jリーグの開幕当初、ブラジル代表でキャプテンを務めたジーコ氏が選手としてプレーするなど、強豪チームとしてJリーグを盛り上げました。
これまで国内三大タイトルのうち、J1は8回、Jリーグカップは6回、天皇杯は5回優勝していて、いずれもJリーグのチームで最多の優勝回数を誇っています。
また、去年のACL=アジアチャンピオンズリーグで初優勝し、アジアチャンピオンに輝いたほか、2016年に行われた世界一のクラブチームを決めるクラブワールドカップでは準優勝を果たしています。
日本代表にも、ワールドカップで活躍した秋田豊氏や柳沢敦氏をはじめ、今月、スペイン1部の強豪、バルセロナに移籍した安部裕葵選手など多くの選手を輩出しています。
IT企業とプロスポーツ
サッカーをはじめとするプロスポーツでは最近、IT企業の経営参入が相次いでいます。
Jリーグでは、2004年に楽天がヴィッセル神戸を買収したのをはじめ、去年はミクシィがスポーツ事業を立ち上げてFC東京に出資し、また、サイバーエージェントはJ2の町田ゼルビアの筆頭株主となって経営権を取得しました。
また、プロ野球でもいわゆる球界再編騒動を受けて、2004年に楽天が「東北楽天イーグルス」を創設して新規参入を果たし、その後もソフトバンクが当時のダイエーから、DeNAが横浜ベイスターズをそれぞれ買収しています。
こうしたIT企業は事業を拡大している段階でプロスポーツの経営に参入するケースが多く、歴史と人気があり、知名度の高いプロスポーツチームの経営に関与することで企業価値の向上を図る狙いがあると指摘されています。
また、チーム側にとっても、若い世代と親和性の高いIT企業から集客やファンサービスなどのノウハウを取り入れることができ新たなファンの獲得にメリットがあるということです
NHK公式ホームページ:http://www.nhk.or.jp
NHK 公式Twitter:@nhk_news
総理官邸 公式Twitter:@Kantei_Saigai