大雨の際などに防災機関や自治体が出す情報が複雑で避難に結び付いていないという指摘を受け、国は、情報を5段階のレベルに分けて避難行動を促すなどとする新たなガイドラインをまとめました。今後、周知を図ったうえで、ことし6月ごろからの運用を目指すとしています。
29日に公表されたガイドラインによりますと、防災機関や自治体が出す大雨に関する防災情報について、危険度の高さごとにレベル1からレベル5までの5段階に分けて発表し、レベルに応じて避難行動を促すとしています。
まず、最も低いレベル1は、数日以内に警報が出されるような大雨が予想される時で、必要な防災行動は「災害への心構えを高める」としています。
レベル2は、大雨や洪水の注意報が出された場合で、「避難に備え避難行動を確認する」としています。
レベル3は、大雨や洪水の警報、氾濫警戒情報などが出された場合で、「高齢者などの早めの避難」が必要だとして、自治体の「避難準備の情報」に当たるとしています。
レベル4は、土砂災害警戒情報や氾濫危険情報などが出された場合で、「近くの安全な場所への避難や、建物内のより安全な場所への移動」が必要だとして、自治体の「避難勧告」や「避難指示」に当たるとしています。
最も危険度が高いレベル5は、大雨特別警報や氾濫発生情報が出された場合で、「災害が発生している状況で命を守る最善の行動」が必要だとしていて、自治体が災害の発生を確認できた場合は「災害発生情報」を発表すべきとしています。
ガイドラインについて、国は今後、各地の自治体や防災機関に周知を図り、ことし6月ごろからの運用を目指すとしています。
山本防災担当大臣は「わかりやすく避難に直結するような情報発信をしようということで切り替えた。周知と説明に努めていきたい」と述べました。
レベル化にはまだ課題も
今回の防災情報のレベル化には、数多くある情報をわかりやすく整理し、避難を促すねらいがありますが、課題も残されています。
課題1 レベル5待ち
まず挙げられるのが、災害の危険度が5段階のレベルに分けられることによって、最も高いレベル5になるまでは危険ではないと誤解してしまう「情報待ち」の課題です。
レベル5は、すでに災害が発生しているような状況で、発表されてから避難するとかえって危険な場合があります。
さらに、レベル5では自治体が災害を把握できた場合に「災害発生情報」を発表するとしていますが、実際は発生しているのに自治体が確認できず、発表が遅れるケースもあります。
このため国は、レベル5を待っていては手遅れになることを周知し、避難はレベル3か4の時点で行うことが重要であることなど、レベルごとの意味を正しく理解してもらう取り組みを進めるとしています。
課題2 レベル情報への慣れ
もう一つの課題が、各地でレベル3や4の情報が発表されることによって生じる情報への慣れです。
「避難準備の情報」がレベル3、「避難勧告」「避難指示」がレベル4に当たりますが、活発な梅雨前線や台風が接近するなどして大雨となる場合には、各地でレベル3と4が発表されることになります。
レベル3や4になって避難をしても災害が起きないケースを住民の多くが見聞きした場合、危機感が伝わらずに避難に結び付かなくなる、「レベル情報の軽視」につながるおそれがあるのです。
これを防ぐためには防災情報の精度を上げることが重要で、国も実際に情報が出たあとにどの程度災害が起きたか毎年確認し、基準を見直すなどして改善に取り組むとしています。
防災情報に詳しい兵庫県立大学の木村玲欧准教授は、「レベル4の避難行動の中に離れた安全な場所に避難する『水平避難』と、建物内の安全な場所に移動する『垂直避難』の2つが含まれるなど、かえって混乱を招くおそれもある。レベル化によって避難行動は改善されたのか、きちんと検証して問題があれば修正することが必要だ」と話しています。
NHK公式ホームページ:http://www.nhk.or.jp
NHK 公式Twitter:@nhk_news
総理官邸 公式Twitter:@Kantei_Saigai