プロ野球、西武から大リーグのマリナーズに移籍することが決まった菊池雄星投手が3日、入団会見に臨み「技術的にも人間的にも大きくなるところを見せたい。大リーグに来ることが目標ではなく、結果を出すことが目標です」と新天地での抱負を述べました。
去年、西武で14勝を挙げた27歳の菊池投手は、去年のシーズン終了後、ポスティングシステムを使った大リーグ入りを目指し、マリナーズとの間で3年を基本にして最長で7年となる内容の契約を結びました。
3日、シアトルにあるマリナーズの本拠地の球場で行われた入団の記者会見で、菊池投手はまず、みずから選んで決めたという背番号18のユニフォームを披露しました。
菊池投手は、アメリカのメディアに向かっては英語で話し「きょうは自分と家族にとって特別な日で、この場にいられることがうれしいです。大リーグに来ることは15歳からの夢でした。大リーグ行きを認めてくれた西武にも感謝したいです」と述べました。
そして、新天地での目標については「日本で積み上げてきたものを評価してもらっているので、それをしっかりと出せるようにしたい。その中で変えるべきところには適応していきたい」と述べたうえで、「技術的にも人間的にも大きくなるところを見せたい。大リーグに来ることが目標ではなく、結果を出すことが目標です」と話しました。
また、マリナーズでイチロー選手と一緒にプレーする可能性があることについては「イチローさんは雲の上の存在で、会うまで信じられない。一緒にプレーする機会があれば一生の財産になるし、ピッチングを楽しみたい」と笑顔で話していました。
一方、会見に同席したマリナーズのジェリー・ディポートゼネラルマネージャーは、菊池投手の獲得について「マリナーズはこのオフに、選手のトレードなどチーム作りのために多くの作業をしてきたが、菊池投手の獲得は最もうれしいことで期待も大きい。菊池投手の年齢や才能はマリナーズが求めているものに合っている」と述べました。
菊池投手は来月中旬からアリゾナ州でチームのキャンプに合流し、3月20日に東京で行われる開幕戦からの先発ローテーション入りを目指します。
大型契約の可能性も
菊池投手とマリナーズの契約は3年が基本で、最長では7年契約になります。3年目を終えた時点で、菊池投手が4年目もマリナーズと契約してプレーするかどうか、選ぶことができます。
一方、マリナーズは菊池投手が3年目を終えたあと、さらに4年間、契約を延長するか、選ぶ権利があります。
アメリカのメディアは菊池投手の契約金額は、基本となる3年目までが総額4300万ドル(日本円で46億円余り)と伝えています。菊池投手が4年目も契約した場合は、総額5600万ドル(60億円余り)となります。
さらに、契約が延長されて最長の7年契約になった場合は、総額で1億900万ドル(117億円余り)に上り、大リーグでも大型契約となる可能性があります。
チーム再建に重要な役割を期待
マリナーズは、イチロー選手がアメリカンリーグのMVP=最優秀選手と新人王を同時に受賞した2001年以降、プレーオフ進出から遠ざかっています。
こうした中、このシーズンオフは数年後の躍進を見据え、投手、野手ともに主力をトレードに出して、有望な若手を獲得するなどチームの再建を図っています。
菊池投手が加わる投手陣では、昨シーズン、ノーヒットノーランを達成した左投げで30歳のジェームズ・パクストン投手をヤンキースに、セーブ王になったエドウィン・ディアス投手をメッツにそれぞれトレードで出したほか、中継ぎピッチャーの入れ替えも図っています。
また野手でも、スター選手でセカンドのロビンソン・カノー選手や、ショートのジーン・セグーラ選手といった主力選手を次々と放出しました。
マリナーズの編成を担うジェリー・ディポートゼネラルマネージャーは、解体後のチーム再建策について、若手選手による戦力の底上げを図り、再来年以降のプレーオフ進出を目指す考えを示してきました。
こうした中で、27歳の菊池投手は日本での実績と経験を積んでいることに加え、これから年齢的なピークを迎えるピッチャーとして評価されていました。左投げのパクストン投手が投手陣から抜けたあと、菊池投手は貴重な左の先発投手として重要な役割を果たすことが期待されています。
イチロー選手とともに出場の可能性も
マリナーズでは、ことし3月の開幕戦以降、イチロー選手が試合に復帰する見通しで、2人が開幕戦のカードで一緒にプレーする可能性があります。
昨シーズン、イチロー選手はマリナーズでレギュラーとして開幕を迎えましたが、去年5月に出場選手登録を外れて球団の特別アシスタントに就任し、その後はチームに同行して練習を続けていました。
マリナーズのジェリー・ディポートゼネラルマネージャーは、来月から始まるキャンプに45歳のイチロー選手を招待選手として参加させたうえで、調整が順調に進めば、3月20日から東京で行われるアスレティックスとの開幕2連戦で、出場選手として登録する方針を示しています。
一方、菊池投手はマリナーズの先発投手陣の中で上位に位置づけられて、この開幕2連戦でデビューする可能性もあり、イチロー選手の試合復帰と重なることで歴史的な共演が実現することも期待されます。
多くの日本選手が活躍マリナーズ
マリナーズは、アメリカ北西部のワシントン州シアトルを本拠地とし、イチロー選手をはじめ、多くの日本選手が活躍してきた日本とゆかりのある球団です。
マリナーズはアメリカンリーグ西部地区に所属していて、これまでに地区優勝を3回経験していますが、アメリカンリーグの優勝やワールドシリーズ進出の経験はなく、球団の悲願となっています。
マリナーズで活躍してきた日本選手のうち、イチロー選手は2004年に、大リーグ記録となっている262本のシーズン最多安打をマークしたほか、10年連続の200本安打など数々の記録を打ちたてました。
また2000年には、佐々木主浩さんが37セーブをマークして、アメリカンリーグの新人王を獲得。2015年には、岩隈久志投手がノーヒットノーランを達成しました。
こうした日本選手の活躍の舞台となってきた本拠地の球場、「セーフコ・フィールド」は、ことしからマリナーズとアメリカの携帯電話会社が新たに命名権の契約を結び、名称が「Tモバイル・パーク」に変更されました。
マリナーズの地元シアトルでは
菊池雄星投手のマリナーズ入団について、地元のシアトルのファンから期待の声が聞かれました。
女性のファンは「菊池投手は、まだ27歳と若くて、日本選手のピッチャーのなかでもベストだと思う。マリナーズが獲得できて幸運だと思うしとてもうれしいです」と興奮気味に話していました。
男性のファンは「マリナーズはイチロー選手などの日本選手とともに成功してきた。菊池投手はアメリカの野球に適応する必要があるが、これまでの日本選手と同じように活躍の歴史を繰り返してほしい」と話していました。
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