長年にわたって、その道一筋に打ち込んできた人、芸術やスポーツの分野で功績のあった人などに贈られる「秋の褒章」の受章者が発表され、小説家の林真理子さんや、将棋棋士の羽生善治さんなど、797人と22の団体が受章することになりました。
ことしの「秋の褒章」を受章するのは、
▼人命救助活動で功績のあった人や団体に贈られる「紅綬褒章」が4人。
▼ボランティア活動で功績のあった人や団体に贈られる「緑綬褒章」が21人と22の団体。
▼長年にわたって、その道一筋に打ち込んできた人に贈られる「黄綬褒章」が255人。
▼芸術や文化、スポーツ、それに学術研究の分野で功績のあった人に贈られる「紫綬褒章」が16人。
▼公共の仕事で顕著な功績があった人に贈られる「藍綬褒章」が501人です。
このうち、「紫綬褒章」では、
◆脚本家、演出家として幅広く活動し、軽やかな喜劇感覚と都会的なセンスに貫かれた作品で多くの観客を魅了するケラリーノ・サンドロヴィッチさん、
◆長年にわたり幅広い役柄を演じ、日本を代表する俳優として国際的に活躍する真田広之さん、
◆女性ならではの視点から、エッセイや伝記小説、恋愛小説など幅広い分野ですぐれた作品を発表している小説家の林真理子さん、
◆将棋棋士として長年、第一線で活躍し、将棋の普及や振興に大きく貢献した羽生善治さんらが受章します。
「秋の褒章」の受章者は、今月14日に、皇居で天皇陛下からお言葉を受けることになっています。
真田広之さん「予期せぬご褒美のようだ」
紫綬褒章を受章する俳優の真田広之さんは、東京都出身の58歳。
子役として俳優人生をスタートさせ、20歳のとき、アクション映画で初主演しました。
1991年(平成3年)のNHK大河ドラマ「太平記」では、主役の足利尊氏を、1996年(平成8年)の大河ドラマ「秀吉」では、石田三成を演じました。
また、活躍の場を海外にも広げ、1999年から2000年にかけては、イギリスの歴史ある劇団、ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーの「リア王」に出演しました。すべて英語のセリフで、真田さんは唯一の日本人キャストとして挑みました。
また、2003年にはトム・クルーズ主演のハリウッド映画「ラストサムライ」に出演したほか、2004年には、主演した時代劇「たそがれ清兵衛」がアメリカのアカデミー賞の外国語映画賞にノミネートされるなど、日本を代表する俳優としてその地位を固めました。
10年余り前にハリウッドのある、アメリカ西海岸のロサンゼルスに拠点を移し、アメリカの映画やテレビドラマなどで幅広く活躍しています。
ロサンゼルスで記者会見した真田さんは受章について「身に余る栄誉をたまわり、驚きと喜びと、ことの重大さをひしひしとかみしめている。予期せぬご褒美のようだ」と喜びを語りました。
また、今後の抱負について、「俳優としての挑戦を続けながら、裏方として日本のすばらしい人材や美しさをよい形で発信していきたい。ここ最近、いち俳優として言える限界を感じており、プロデューサーとして来年から始動したい」と話していました。
林真理子さん「うれしく光栄なこと」
紫綬褒章を受章する小説家の林真理子さんは、山梨県出身の64歳。
大学を卒業後、コピーライターをへて、昭和57年にエッセー集「ルンルンを買っておうちに帰ろう」でデビューしました。
昭和61年には「最終便に間に合えば」と「京都まで」という作品で直木賞を受賞し、その後も幅広いジャンルで機知に富んだリズミカルな文章による優れた作品を発表しています。現在放送中のNHKの大河ドラマ「西郷どん」は、林さんの小説が原作となっています。
林さんは受章について「36年間、愚直にひたすら書いてまいりましたが、こういうふうに認めていただけたことをうれしく、光栄なことだと思っています。とにかく世の中に出たい、有名になりたいという軽薄な形で出てきた私が、小説を書くということに出会って書かせてもらったことで、非常に成長させてもらったと思っております」と喜びを語りました。
そのうえで、「私の作家としての芯は物語を作るのが大好きだということで、書いていることを快楽に感じます。今後、後世に残る小説を1冊書きたいと思う」と抱負を述べていました。
また、ふるさとの山梨について聞かれると、「私の3作目の小説、『葡萄が目にしみる』は山梨を舞台にしたもので、故郷への思いはとてもあります。自分の故郷を背負っているという気持ちはずっとありました。私の作品のモチーフにも何度も何度も登場しますし、とても大切な場所です。山梨の皆さんに喜んでいただけるとうれしいなと思います」と話していました。
羽生善治さん「大きな励みに前進続ける」
紫綬褒章を受章する将棋棋士の羽生善治さんは、埼玉県出身の48歳。
昭和60年に史上3人目の中学生棋士としてプロ入りし、4年後の平成元年に初めて挑んだタイトル戦の竜王戦を制して、当時の最年少記録となる19歳2か月で初タイトルを獲得しました。
25歳だった平成8年に当時の七大タイトルをすべて独占する「七冠」を史上初めて成し遂げ、その後もトップ棋士として活躍を続けています。
去年12月、将棋界の7つの永世称号の資格をすべて獲得して前人未到の「永世七冠」を達成し、ことし2月には将棋界初となる国民栄誉賞を受賞しました。
これまでに獲得したタイトルの数は歴代最多の99期に上り、現在タイトル保持者として戦っている竜王戦に勝てば、通算100期の大記録を達成します。
羽生さんは受章について、「今までの活動だけでなく、これから先の歩みに対しての期待も込められているのかなと受け止めています。将棋にはまだまだ研究すべきことがたくさん残されていて、そのおもしろや奥深さが前に進んでいく上でのエンジンになっています。受章を大きな励みに前進を続けていこうと思います」と話していました。
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