太陽に最も近い惑星、水星の謎を探るため、日本とヨーロッパの2つの探査機が日本時間の20日午前、南米のフランス領ギアナから打ち上げられました。探査機は予定の軌道に入り、打ち上げは成功しました。
日本とヨーロッパの探査機を載せた「アリアン5」ロケットは、日本時間の20日午前10時45分、南米のフランス領ギアナの発射場から飛び立ち、27分後に探査機は予定の軌道に入り、打ち上げは成功しました。
探査機は7年後の2025年12月に水星に到着する予定です。
日本の探査機「みお」は、幅が1メートル80センチ、八角形の柱の形をしていて、強い太陽光から機体を守るため表面の一部に鏡が貼り付けられています。
日本の探査機による水星観測は初めてで、水星を周回しながら、およそ1年かけて磁場や薄く存在する大気などを観測する計画です。
一方、ヨーロッパの探査機はセンサーなどを使って表面の地形や鉱物の種類などを調べる予定です。
水星は接近すると探査機が高温にさらされるため、機体を守る特別な対策が必要になるほか、太陽の強い引力で引っ張られるため、軌道投入に高い技術が求められます。
こうしたことから、過去に水星を探査したのはアメリカの2機だけです。
水星は誕生の過程などわかっていないことも多く、今回の日欧の共同プロジェクトでどこまで謎の解明が進むのか、成果が期待されています。
日欧の探査機 それぞれの役割とは
JAXA=宇宙航空研究開発機構が開発した探査機「みお」。
日本にとって初めてとなる水星探査の主な観測対象は、水星をとりまく磁場です。磁場を知ることで、水星内部の構造などが詳しくわかってくるということで、「みお」は水星を周回するだ円の軌道に入り、長さ5メートルのセンサーを使い、およそ1年間、磁場のデータを集める計画です。このほか薄く存在する大気や、太陽から届く衝撃波なども観測します。
一方、ESA=欧州宇宙機関が開発した探査機は、赤外線などのセンサーを使って水星表面の地形や鉱物の種類などを詳しく調べる予定です。
2機はつながった形で打ち上げられ、金星や地球などの重力を利用する「スイングバイ」を9回行って速度やコースを調整し、7年後の2025年12月に水星に到着します。
そのあと2機は分離し、それぞれが水星を回る別の軌道に入り観測を行う計画です。
アメリカに次いで行われる日欧の共同プロジェクトでどこまで水星の謎の解明が進むのか、成果が期待されています。
謎多い水星 条件悪く探査に遅れ
水星は太陽に最も近い軌道を回っている惑星で、表面は月に似ていてクレーターに覆われています。直径は4880キロで、地球のおよそ5分の2、太陽系ではもっとも小さい惑星です。
地表の温度は強い太陽の光でおよそ430度まで上がります。一方、日があたらない夜の部分は氷点下170度前後まで下がり、その温度差は600度にもなります。
地球と同じように岩石や金属でできているとみられ、金星、火星、地球とともに水星は「地球型惑星」という種類に分類されます。
水星と地球の共通点はほかにもあります。磁場です。4つの「地球型惑星」の中で、今でも固有の磁場をもつのは水星と地球だけです。こうしたことから水星の成り立ちを知ることは、地球の成り立ちを知ることにもつながると期待されています。
ただし、水星の探査は火星などに比べると遅れています。それは太陽に近いという条件の悪さからです。
接近すると探査機は高温にさらされるため、機体を守る特別な対策が必要になるほか、太陽の強い引力に引っ張られるため軌道投入に高い技術が求められます。こうしたことから過去に水星を探査したのはアメリカの2機だけです。
このため、まだ謎の多い水星。例えばその誕生についても、太陽から離れた別の場所でつくられ、何らかの原因で今の場所に移動してきたという説があるなど、惑星の基本的な成り立ちもわかっていないことが多くあります。
こうした疑問にこたえようとアメリカの探査以来となる計画を共同で立ち上げた日本とヨーロッパ。水星の素顔がどこまで明らかになるか、成果が期待されています。
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