再来年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、障害者への差別をなくすための東京都の条例が今月1日に施行されました。条例では、企業などに対し、障害者の状況に合わせた配慮を義務づけていて、都は条例への理解を進めるセミナーを開いています。
今月1日に施行された東京都の障害者差別解消条例では、企業など民間の事業者に対し、障害を理由に入店を拒否するなど不当な差別を禁止しているほか、障害者の状況に合わせた「合理的配慮」を義務づけています。
都はこの条例を周知するため、企業を対象にした研修会を各地で開いていて、東京・港区で16日開かれた研修会には不動産会社の店長や幹部などおよそ200人が参加しました。
この中で、東京都の担当者は、広告などに「障害者はお断り」と記載することや、障害のあるお客から詳しい事情を聞かずに不動産の仲介を一方的に断ることなどが差別にあたると説明しました。
そのうえで、仲介する物件がバリアフリーに対応しているかどうかを確認したり、物件を案内する際は障害のある人の移動をサポートしたりするなどの合理的配慮を心がけてほしいと呼びかけました。
都に研修を依頼したハウスコムの田村穂社長は「障害のある人への理解が不足すると、きちんとした物件の仲介ができないと思う。研修で学ぶことでよりよいサービスを提供したい」と話していました。
障害者への配慮の動き広がる
障害者への差別をなくすための取り組みをめぐっては、国もおととし4月に「障害者差別解消法」を施行しています。
この法律では、負担が重すぎない範囲で障害者への配慮を行う「合理的配慮」を努力義務としていますが、東京都の条例はこの「合理的配慮」を義務づけています。
さらに都の条例では、障害者を差別する悪質なケースについては事業者の名前を公表するとしています。
法律や都の条例の施行で、企業の間で障害者への配慮に取り組む動きが広がり始めています。
このうち、東京に本社がある生命保険会社では、全国およそ150の支社と営業所のすべてに障害者が指し示すだけで用件を伝えることができるシートや、筆談ができるボードを用意しています。
去年は、障害の状況に応じた窓口での対応方法をまとめたDVDも作成し、従業員の研修を強化しているということです。
太陽生命保険東京支社の柘植洋平支社長は「障害の有無にかかわらず、保険金をお支払いするという責務を全うするために、今後もサービスの向上に努めたい」と話していました。
企業の間でこうした障害者への配慮を広げていくことが今後の課題で、東京都福祉保健局の島倉晋弥共生社会推進担当課長は「事業者の中からは、障害者への配慮の取り組みが組織に浸透しないという話しを聞くこともある。都の条例が事業者の取り組みやきめ細かいサービスの提供を後押しするきっかけになればいいと思う」と話していました。
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