この実証体験は、真に迫るもので皆様にもぜひ一読して頂きたいです。
今回は、手動車椅子を利用した体験が掲載されています。「そうなんだよねぇ」と、共感するところもあれば電動車椅子ユーザーとしては、「これも不可能だよ」と、思う場面もありました。
それでも、これが新たな一歩となりそうで、大変嬉しいです。
読み進めていくうちに、視覚障害と聴覚障害による不便さについても書かれていたので、この記事全体に「バリアフリー」を感じることができました。
長ーくなり、お待たせさせてしまいましたね。汗
以下は、原文のままです。なお、サイトには写真付きとなっております。
車いすに乗って恵比寿の街を散策してわかったこととは
さまざまな社会問題と向き合うNPOやNGOなど、公益事業者の現場に焦点を当てた専門メディア「GARDEN」と「東洋経済オンライン」がコラボ。日々のニュースに埋もれてしまいがちな国内外の多様な問題を掘り起こし、草の根的に支援策を実行し続ける公益事業者たちの活動から、社会を前進させるアイデアを探っていく。
「恵比寿新聞」編集長でGARDENジャーナリストのタカハシケンジさんと、GARDEN代表の堀潤が主宰する「NPO法人8bitNews」が、これまで1年以上にわたり共同で開催してきたイベントがあります。「伝える人になろう講座」です。
8月に行われた「伝える人になろう講座」のテーマは、「“補助犬を知っていますか?”」。事前のロケで、「恵比寿UD(ユニバーサルデザイン)チェック」を行いました。「恵比寿は車いすユーザーにとって優しい街か?」を検証しています。
「恵比寿は車いすユーザーにとって優しい街か?」
本記事はGARDEN Journarism(運営会社:株式会社GARDEN)の提供記事です
恵比寿新聞編集長のタカハシです。今回の記事は長いですよ。何不自由なく生活している健常者である私たちにとって「障がいのある方」の生活はなかなかイメージしづらいですよね。
毎日恵比寿の街を歩いていて障がい者にとって便利??不便??など考えて歩いたことはほぼ100%なかった自分が今回あることを体験したことで視点や考え方や多様性についてとても考えさせられる良い経験になりました。なので皆さんにシェアしたくて今回まじめに記事を書いています。
きっかけは恵比寿に事務所を置くマイメンのジャーナリスト堀潤さんと続けている受信・発信・学習・支援を学ぶ「伝える人になろう講座」の8月のテーマ“補助犬を知っていますか?”でのロケでした。「恵比寿は車いすユーザーにとって優しい街か?」?わたくし恵比寿新聞が車いすに乗って恵比寿を回って感じたことを取材するというものでした。わが街恵比寿は大丈夫か!?
一番手前で被写体がいないところにピントを合わせている方が微笑み王子こと堀潤さん。右から桃屋の「ごはんですよ」のキャラクターに似た方がamuの千々和さん。真ん中にいらっしゃるのは今回のアドバイザーNPO法人 日本補助犬情報センターの橋爪さん。そして一番左にいるイケメンが僕です。この4人で、恵比寿は車いすユーザーにとって優しい街なのか?という検証取材を開始。まずは恵比寿駅から出発することになりました。
初めて「車いす」に乗って気づいたこと
まずは基本的な操作を日本補助犬情報センター橋爪さんに教えてもらうことに。
橋爪さんの活動は補助犬の活動の理解と普及を目指すNPO法人。今回は「補助犬」ではなく「車いす」を使って気づいた点についてアドバイスや解説をお願いいたしました。母のように使い方を教えてくださいました。ママ〜!
まず乗ってみた感想は……。車いすって意外と体にぴったりフィットするコンパクトなものなんだな。そして当たり前だけど全然動かしづらい。動かし方がわからない。しかも人通り多い。ゾワゾワ感半端ない。とりあえず、恵比寿西口ロータリーから駅の改札前を通って恵比寿1丁目側に。
★気づいたこと
?人通りが多いと緊張感半端ない
?ちょっと邪魔がられて傷つく
え!??50cmの段差だけのためにエレベーター!?
JR恵比寿駅には階段で降りられない車いすの方のためのエレベーターがあります。エレベーターの長さ、なんと約50cm。え!??50cmの段差だけのためにエレベーターが存在することにびっくり。
西口ロータリーから改札前を通って恵比寿1丁目を出るまでにかかった時間なんと5分。普段歩けば30秒で渡れる距離がこんなに時間がかかるとは……。
★気づいたこと
?エレベーターのボタンが押しづらい場所にあると不便だな〜
?ドアの閉まるタイミングが怖い&狭い
?点字ブロックが車いすの操作性を低下させる
?親切にドアを開けてくれる千々和くんが実は邪魔だった(笑)
べろべろばー!?いや。違うんですよ。やっとの思いで改札前を通って休憩しようと車いすを停めたら、勝手に車いすが動くんですよ……手を放すとガガガガって……。
え!??ちょっとまって……ここ坂道だったの??普段歩いているときはこの場所が坂道だとは。
全然気づいていなかったのですが車いすに乗ると少しの坂でもわかるんです。だって何もしなくても動くんだもん……。
★気づいたこと
?ちょっとの高低差がわかった
?この時点でブレーキの存在に気づく
オシャレな歩道と車いす
えっちらおっちら……この道。平らに見えるでしょ??でもね、実はこの道もかなりの高低差があるんです。
たぶん見てわからないと思うので解説すると歩道側が高くて道路側に行くほど低くなるので、走るとこのとおり……。
道路側に引き寄せられる。車いすを手で漕いてまっすぐ行こうとしてもどうやっても道路側に引き寄せられて……これがまた自分の体重もあるのですが重い。
しかも歩道はオシャレ仕様のレンガチックなデザインでこのちょっとした凹凸がつらい。
★気づいたこと
?ちょっとした高低差があるとまっすぐ行けない
?オシャレ凸凹に手が取られて結構辛い
前から降りるんじゃないの……?
あら??どうしたの??玉川青果のお母さんに遭遇。
「え!??恵比寿新聞さんケガしたの?」
「いや。今街のユニバーサルデザインを……」
「え??ユニ??クロ??なにそれ?」
すると堀さんが詳しく解説してくださり、理解。そのまま恵比寿名物「恵比寿ストア」に入っていくことに。
八百屋さんと魚屋さんの間はすんなり車いすで自力で入れて和気あいあいモードで近所のおばちゃんにチャチャ入れられながらストア内をするすると進んでいたのですが、ここで思わぬことが発覚。
最後の出口がすごい段差。
ちょっと!?聞いてないよ!?近所のおばちゃんにあたる始末です。
入り口・出口に「段差あり」なんて書かれているほうが稀(まれ)なわけでして、こんなトラップが存在していたとは。橋爪さんに手助けして頂くことに。
え!??後ろから!??いやいや。ちょっと待ってよ。前から下りるんじゃないの??……後ろからってかなり怖いよ……。こけたら後頭部直撃のバックドロップ状態ですよ。本当に大丈夫??橋爪さん!?
橋爪さん:ちょっ…と、…恵比寿新聞さん……。
恵比寿新聞:ヒィー。後ろ怖い。どうしました……?
橋爪さん:お……重い……。
恵比寿新聞:……。
後ろ向きで下りることに。無事着地。
★気づいたこと
?後ろ向きで下りるの怖い
?助けてくれる人探すの大変
?助けてサインで目を合わせるもそらされてショック
?自分が太っていることに気づく
堀潤:どうですか??タカハシさん。
恵比寿新聞:どうもこうもないよ!?後ろから下りるなんて聞いてないよ怖かったんだぞ!
堀潤:ははははは(さわやかに)。
橋爪さん:前から下りるほうが危険なんですね。下りる際、後ろからは車いすでは基本です。
恵比寿新聞:でも助けてくれる人が橋爪さんだから慣れているし安心だけど、補助する側が初心者だと結構怖い!!?失礼かもだけど。怖い。
「恵比寿は優しい街ですか?」
ということで一行は先へ進みます。ここまでの走行距離約100m……。取材しながらですが30分かかった。
え!??どうしたの!?
恵比寿の定食屋「こづち」のあやさんに会う。
あやさん:いや。さっき車いすで走っているのを見てさ。どうしたのかな?と思って走って来ちゃったよ。
恵比寿新聞:いま、この街が車いすの方にとって優しい街か車いすに乗って検証してるんですよ。
堀潤:どうですか??恵比寿は優しい街ですか?
あやさん:まぁこの辺の人たちはみんな優しいからね〜。
堀潤:そうなんですね〜。
あやさん:ちょっと(笑)ちゃんと載せるときは事務所通してよ(笑)。
恵比寿新聞:へーい(笑)。
★気づいたこと
?事務所ってどこやねん(笑)
美容室のバリアフリーでの形
近くの美容室へ。こちらタコ公園の隣の美容室「スタンス」さん。
スタンスさんはちゃんとバリアフリー構造なのか、突撃隣の美容室ということでチェック!
え!??まじ?
恵比寿新聞:え!??いきりなり段差?
スタンスさん:そうなんですよ。以前は車いすでも登れるブロックがあったんですが、大家さんの都合で無くなったんですよ……。
堀潤:スタンスって車いすのユーザーさんとかいらっしゃいますか?
スタンスさん:はい。実際に足の不自由なお客様もいらっしゃるので、この段差、困りますね。
堀潤:ではどうやってお客さんを店内に?
せーのっ!ふっ! まさかの3人がかりで……。このとき芽生えた気持ちが、申し訳ない……という気持ちだった。
別に障害を持っていることが悪いとは思わないけど、なんだろう。この申し訳なさ。口から出る言葉はつねにすみません、しか出てこなかった。
店内は段差がなく車いすにも心地よくスムーズに移動できる仕様になっていた。段差がないだけでこれだけストレスが無いものなのか……。
スタンスさん:これから高齢化社会がやってくるじゃないですか??やはりそういうことも考えて店内もバリアフリー構造にしているんですよ。
恵比寿新聞:床が超フラットで快適でした。そのほかにはどういうところがユニバーサルデザインというかバリアフリーなんですか?
スタンスさん:美容室のいすが備え付けの所が多いのですが、うちはいすをのけられるので車いすの方でも利用できるんです。
恵比寿新聞:なるほどなぁ〜。細かいことだけどとても大事なことですよね。
なぞの記念写真(笑)。まぁいいか。
また下りる時も3人がかりでお手伝いしてもらいました。スタンスさんありがとうございます。
★気づいたこと
?手伝ってもらうと凄く申し訳なくなる
なんか悔しい
超きつい……。
恵比寿新聞:堀さん……ちょっと休憩しません?
堀潤:あぁ〜疲れたでしょ〜。
恵比寿新聞:なんかね……手が痛い。
堀潤:そうですか〜。痛いですね〜。
恵比寿新聞:痛いです。
堀潤:先を急ぎましょう!
恵比寿新聞:この鬼!
★気づいたこと
?堀潤はいつもニコニコしてるけど実は「ドS」
こういうガードレールに駐輪している自転車をよけようとしたら、横の溝にハマって動けなくなりました。こういうとき、また誰かに助けを求めなければ。そのとき変な気持ちが芽生えました。
なんか悔しい。人に助けてもらわなければ自分は何もできないんじゃないか、という何とも情けない気持ちが芽生えてきました。
すると人に声をかけることすら嫌になってきて……むしろ申し訳ない気持ちを通り越して何とも言えない気持ちになってしまった。
友達の存在
側溝にハマって動けない僕に気づいたのか、amuの千々和君が一目散に助けてくれた。このとき、ここまでの車いすの旅で出会った人たちの顔が思い浮かびました。
街で会えば、「どうもどうも〜!?元気?」「最近どうしてる?」って声を掛け合う人たちの存在をこの「2dmの溝」にハマって動けなくなったときにどれだけありがたい存在かを知りました。
いつもは「当たり前」のことが「有り難い」と感じたんですね。このとき、やはり強烈に思ったのは都市生活の課題でもある「近隣のつながりの希薄化」。
障がい者であろうが健常者であろうが、辛いときや悲しいときや困ったときに声をかけてくれたり助けてくれたり寄り添ってくれる「近所の友達」ってとても貴重な存在だと思いました。
★気づいたこと
?「道の段差」は近所づきあいで越えられる
「すみません」を「ありがとう」に
最終目的地、「ブレッツカフェル・コントワール」にたどり着きました。もちろんスタッフの方に支えられて入店。このとき、すでに「すみません」という言葉から「ありがとう」にかわっていました。
橋爪さん:恵比寿新聞さん。いかがでしたか?
恵比寿新聞:いや。これだけ辛いものだとは思わなかったです。
橋爪さん:頑張りましたね〜。たくさん坂道ありましたからね〜。
恵比寿新聞:気持ち的にも手助けしてくれていることに「申し訳ないな〜」と思うようになったりとか。
堀潤:うんうん。「すみません」って何回も言ってましたよね。
恵比寿新聞:でも途中で、「すみません」という気持ちから「ありがとう」に変わったんですね。
橋爪さん:そうなんですよ。恵比寿新聞さん。車いすユーザーさんや補助犬ユーザーさんがいつも心に持っている「すみません」の気持ちがいつの日か社会がちゃんと理解して「ありがとう」に変わればいいなと思っているんです。
恵比寿新聞:僕もそうなる道筋が見えてきたように思えます。今回は「車いす」でしたが「補助犬」の現在の状況ってどうなんですか?
橋爪さん:2002年、国は不特定多数の人が出入りする飲食店や病院やお店などに盲導犬、介助犬、聴導犬の同伴受け入れを義務づける法律「身体障害者補助犬法」を作ったんですね。でもね。
恵比寿新聞:でもね?
橋爪さん:補助犬ユーザーの60%が入店拒否の経験があるんです。
周知がされていない。
8月10日恵比寿amuで開催された、「伝える人になろう講座」“補助犬を知っていますか”のときに登壇いただいた盲導犬ユーザーさん、聴導犬ユーザーさんからこんな話があったんです。
■実際にあったこと
・保健所からダメと言われたと拒否
保健所から動物の入店は衛生上だめだといわれているので、という返答で拒否。しかし特殊な「運転免許」ぐらいの試験をパートナーと補助犬が受けて、衛生的にも非常にきれいに管理されている。
・入店はできたものの端に座らされる
拒否後しっかりと説明をして入店はできたものの、お客さんのいない一番奥の席に通される。なんだかさみしくなった。
・行きつけの店から拒否
行きつけの店の大好きなパスタ屋さんから突然「入店できません」と言われる。お客様からクレームが入ったからだそうです。
優しい無視
聴導犬ユーザーの東さんからこんな話がありました。
東さん:補助犬は見た目も普通の犬と変わりません。ちゃんとわかりやすく「盲導犬」とか「聴導犬」とか「介助犬」と書かれているのです。よく「かわいい〜」と普通の犬のようにかわいがってくれるのですが、聴導犬はわれわれの耳となって働いてくれています。遊んでもらうと仕事ができなくなるんです。なので本当に申し訳ないのだけれども、できるだけ犬には温かく見守るように「優しい無視」をしてください。
補助犬全般に言えるこの「優しい無視」。ついかわいいから、よしよししたくなっちゃいますよね。補助犬はパートナーを守るためにかなり仕事に集中しています。
でもそこはロボットじゃなくて犬。触られたり、声をかけられたりすると集中が途切れてしまうようなんです。なので、
・犬に声をかけない
・犬に触らない
・犬と目を合わさない
なんだそうです。
補助犬がかわいそうに見える
盲導犬ユーザーの須貝さんがこんなことをおっしゃっていました。
須貝さん:よく「補助犬ってかわいそう」というイメージがあるのですが、とても残念ですね。24時間働かされていると思われがちですが、こうやってトークをしているときの補助犬は、「あ。今は僕の仕事じゃないんだな」と大人しく寝ているんですね。家に帰って「ハーネス」を外せば彼らはとても楽しく生活しているんです。かけがえのない家族なんですよ。
「伝える人になろう講座」中、須貝さんのパートナー犬「クロスくん」は、爆睡して夢を見てピクピクしてたり(笑)。トーク中はほぼ睡眠していて凄くおとなしい。本当にこれは驚きです。
補助犬と暮らしたことで
盲導犬ユーザーの森山さんがこんなことをおっしゃっていました。
森山さん:ドーサ(森山さんのパートナー犬)と暮らすようになっていろんなことが変わってきたんです。補助犬といるとなんだかほかの人より目立つんですね(笑)。最近はコンサートによく行くのですが、ドーサを連れていると「あっ!?この間も会ったよね」とか、「前回のコンサートで見ましたよ」って知らない人から声をかけてもらって、そこでつながりができているんです。とてもうれしいことです。
森山さんはドーサと暮らし始めてすぐ海外に留学をしたそうです。まだまだ信頼関係ができる前にいきなり留学生活はとても不安だったそうなのですが、思い切ってドーサと生活したことで独自のコミュニケーションができるようになり、今では「気持ちがわかりすぎる」というほどつながりが強くなったそうです。
最後にお話ししてくださった聴導犬ユーザーの辻さんの言葉が身に沁みました。
辻さん:障がいがある人もない人もこうやって話し合えることがすばらしいことだと思います。これからもみんなに「補助犬」のことを考えてもらいたいです。よろしくお願いします。
実はこの後、皆さんで打ち上げに。そのとき聴覚障がいのある辻さんがこんなことを言ったんです。
辻さん:視覚障がい者の方と聴覚障がい者のコミュニケーションはどうすればいいのかな?
というのも聴覚障がい者の方と視覚障がい者の方のコミュニケーションはとても難しいんです。
なぜなら、聴覚障害者には音が聞こえないし、視覚障害者は手話などが見えないからです。
「筆談かな?」という声に視覚障がいのある須貝さんがこう答えました。
須貝さん:実は書くことも難しく、残念ながらそれを見ることもできないんですよ。「でも……」、「ペンありますか?」と言ったんです。
須貝さんは30歳のときに視力の大半を失いました。
「何年ぶりに字を書くんだろうなぁ〜」
と言って書いた言葉が「辻さん。愛してるよ?」というメッセージだった。
伝えたい想い
障がい者であろうと健常者であろうと「伝えたい」という想いがいろんな困難や障壁を飛び越えて「伝わる」ものなんだなと思いました。
須貝さん:障がい者が「生きづらい」って思ってるかもしれませんが、普通に五体満足の人だって生きづらいって人いるでしょ。みんな一人ひとり「ちがう」んですよ。