お盆の時期にお墓参りや法事を予定している方も多いと思います。お墓参りと言えば、線香やロウソクが必須のアイテムですね。ただ最近では、線香ひとつ取ってみても、様子が大きく変わっているようで…。(ネットワーク報道部 吉永なつみ記者)。
おいしそうな線香!?
仏具店の商品棚に並ぶ、昔懐かしいドロップあめやジュースのパッケージ。実はこれらすべて、中身は「お線香」なんです。火をつけると、本物のお菓子やジュースと似た、甘い香りが漂います。
故人の好きだった食べ物を香りで表現するこれらの線香は、大阪にある老舗の仏具関連メーカーが製菓会社とタイアップして作りました。
「父親の好物のあめで生前、よく食べていた」
「食べ物のお供えものは動物に食い荒らされるけど、線香なら心配ない」
発売とともにそんな反響の声が多く寄せられたということです。価格はひと箱700円近くしますが、これまでにおよそ46万箱が売れました。
生き残りかけた商品開発
こうした商品が生み出された背景には、仏具業界を取り巻く厳しい状況がありました。少子高齢化や核家族化によって、お盆にお墓参りをする文化は、かつてほど“当たり前”の家族行事ではなくなりつつあります。
また、仏壇がある世帯も徐々に少なくなっていて、それに伴い、昔ながらの線香の消費量は減少傾向にあるのです。国の統計によると、平成26年の「線香類」の出荷量は全国で5579トン余り。それまでの10年間でおよそ20%も減りました。これからの仏具業界で生き残るには、いかにして消費者のニーズをつかみ、商品開発につなげられるかにかかっていると言えそうです。
この大阪の仏具関連メーカーでも、線香だけでなく、ロウソクについてもビールジョッキやすし、それにおはぎなどを模した商品を「好物シリーズ」として売り出しています。
LED商品も
霊園ではなく、自宅で供養をする人向けの商品も次々と登場しています。例えば、火を使わずに、LEDで明かりをともす電動式の線香です。お年寄りや子どもがいる家でも安全なうえ、何度でも使用できるため、静かなブームとなっています。ネット通販などで手に入るほか、同じような機能の商品は百円均一のショップでも取り扱われているということです。
仏壇にも変化が
個々の生活スタイルに合わせているのは、線香やロウソクだけにとどまりません。仏壇も様変わりしています。
今回、取材に訪れた東京・港区にある創業150年の仏具店では、伝統的な大型の仏壇のほか、高さ数十センチの小ぶりなものまで取りそろえられていました。しかも、洋室にも合いそうなモダンなデザインの商品がそこかしこに置かれていました。
店主の栗原洋子さんによると、店に陳列する仏壇は伝統的なものと現代風のものが以前は「6対4」の割合でしたが、今では「1対9」と完全に逆転しているということです。栗原さんは「時代は変わっても、お客様が故人をしのび、敬う気持ちに変わりはありません。そうしたお客様の思いと現代的なニーズの双方に応えていきたい」と話していました。
このお盆の機会に、それぞれのライフスタイルに合った供養のしかたを、いま一度考えてみるのもいいかもしれません。
NHK公式ホームページ:http://www.nhk.or.jp
NHK 公式Twitter:@nhk_news